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Last Update 2007-06-16T01:26:01 GMT+09:00
京都に恋して
李 雁(中国)
8月下旬ボランティアとして県立図書館で行われた子供ミュージアムに参加させていただいた。私が担当したコーナーは子供と一緒に折り紙でお寿司を折って回転寿司ごっこをするということであった。午後こんな質問を受けた。
「李さんは好きな人がいますか。」子供たちとお母さんたち20人以上集まった教室の空気が沸き立つ中、「はい、京都に恋しています。」と私は京都への片思いを告白してしまった。
しかし、21才の独身留学生として、その答えは成立するだろうか。そして自分が京都を恋愛対象としていいのだろうかとあらためて振り返った。
京都へのかなり一方的な恋心は大学一年の頃に遡る。大学入試に合格して日本語を選んだ。しかしその時は日本の歴史や文化への知識が浅く、 都市と言えば東京大阪しか頭に浮かんでこないというありさまであった。その先入観を一新したのが日本語会話の授業で目にした金閣寺、銀閣寺など京都の寺々であった。将来日本に行って必ず訪ねに行くという夢を立てた。
初めて一人で「出会い」に行ったのは6月中旬であった。その後も京都に対する興味は薄れることなく初秋のころ改めて訪ねて行くことにした。
今回最初に訪れたのは二条城であった。二条城は徳川家康の別荘だと聞いていた。たしかに豪華なお城である。元離宮二条城に入ると、自分が見ている部屋は遥か江戸時代、徳川家康が各地の大名を招集し、戦乱を治め天下を統一する策を作ったところだろうと思って、言葉にできない深い感銘を受けた。「虎の間」に入ると、何百年を経ても家康の天下人としての覇気は消えることなく、しみじみと感じられた。仮に家康がいなければ日本は今でも戦乱に苦しんでいるだろう。
二条城を出て急いで金閣寺へ出発した。金閣寺は京都の名所なので世界各国からの観光客も多かった。人々の流れに乗せられて知らず知らずのうちに出てしまった。山を借景とした見事な庭園しか印象はなかった。

金閣寺から雁の寺へ行った。そこは完全予約制なので拝観できなかった。慈念が常に吸い寄せられるように眺めていた「母と子の雁の絵」も見ることができなかった。たいへん残念だった。京都は年がら年中旅行客で賑わい、騒がしいのではないかと思われがちだが観光客や修学旅行生が訪れる場所は限られたわずかな寺や地域に過ぎない。
次に歩いて訪れた相国寺は静かで人間社会から離れた桃源郷のようであった。その中に入るとまわりの喧騒が嘘のように消える。別の世界に踏み込んだという感じがした。数百年の風霜を経て、余分な装飾が一切排除され洗練された日本人の美意識を目の当たりにした。自分もその中に溶け込んだ。
夕方になって相国寺を出て人に知られぬこじんまりとしたお寺を何か所か訪ねた。数百年を経ても微笑み続ける仏像の姿、寺の良さ、庭園の見事さに強く心打たれた。20代前半の私にとって将来に対する漠然とした不安を慰め、静めてくれた。今回の旅は心の癒しだと言えると思った。
楽しい時間はいつも速すぎる。
ついに離れる時間になった。
「また会いに来るの?」
「はい、来るよ。」
最後に、ぼくと京都との胸の内の会話。
Posted in 2005年
